A. できますが、この建物ではおすすめしません。理由は見えているからです。2階建ての建物なら、屋根はパラペットの陰に隠れて道路からほとんど見えないので、外壁優先という判断が成り立ちます。しかし今回のような平屋は、屋根の面と下屋の鉄骨が目線の高さでそのまま見えています。外壁だけを新品の色にすると、その隣で色あせた屋根と錆の浮いた鉄骨が並ぶことになります。新しいものの隣に置かれた古いものは、前より古く見えます。塗り替えたのにあまり変わらないねと言われるのは、たいていこのパターンです。もうひとつ実務的な理由があります。足場は一度しか架けません。外壁だけ塗って数年後に鉄骨と屋根を塗ると、足場代をもう一度払うことになります。同じ予算を使うなら、塗料のグレードを一段下げてでも壁・屋根・鉄骨を一度に仕上げるほうが、結果的に安くきれいに見えます。
Q2
下屋を支えている鉄骨は、必ず塗る必要がありますか?
A. 必要です。この建物でいちばん先に傷むのがこの鉄骨だからです。理由は3つあります。ひとつめは部材が細く塗膜が薄いこと。柱・方杖・母屋・垂木といった部材は面積あたりの角(エッジ)が多く、角の部分は塗料が乗りにくいためそこから錆が始まります。ふたつめは雨がかかり続けること。屋根の下にありながら、横殴りの雨や跳ね返りをまともに受けます。みっつめは接合部があること。ボルト、溶接部、部材の重なり。水が溜まって抜けない場所が構造上たくさんあり、そこが錆の起点になります。工程としては、錆を工具で削り落とし(ケレン)、錆止め専用の下塗りを入れてから上塗りという順です。細かい部材が多いので手間はかかりますが、ここを飛ばした塗装は数年で錆が浮いて全部やり直しになります。今回の建物は点錆の段階なので、完全に止められます。
Q3
屋根はどうやって塗るのですか? 葺き替えは必要ですか?
A. 割れや穴がなければ、塗装で十分です。波形の屋根材や折板屋根は、高圧洗浄で表面の苔と旧塗膜を落とし、下塗り(シーラー)を入れてから上塗り2回という工程で仕上げます。今回の屋根は色あせが出ていますが、割れ・欠け・穴は見当たらないので塗装で対応できる状態です。葺き替えや重ね葺き(カバー工法)が必要になるのは、屋根材が割れている、下地の野地板や母屋まで傷んでいる、雨漏りが実際に起きているという場合です。この段階まで進むと費用が塗装の数倍になります。なお、古い工場の波形屋根材には石綿(アスベスト)を含むものがあります。含有している場合、割ったり削ったりすると飛散するため、塗装で封じ込めるほうが安全で費用も抑えられます。調査のうえでご提案します。平屋は屋根の面積が床面積とほぼ同じです。屋根を遮熱塗料で仕上げると、夏場の室内温度に体感ではっきり差が出ます。
Q4
ピンクのような色を工場に使って、本当に大丈夫でしょうか?
A. 大丈夫です。ただしどのピンクかで結果が変わります。避けるべきは彩度の高い鮮やかなピンクです。大きな面に使うと色が主張しすぎて建物が浮きます。今回のC案で使っているのは、灰色を混ぜて彩度を落としたダスティピンクです。これは色の系統としてはベージュやテラコッタと同じ暖色の淡色で、外壁材として長く使われてきた色域に入ります。遠目にはやわらかいベージュに近く見え、近づいて初めてピンクだと分かるという見え方をします。奇抜さではなく、見慣れないけれど落ち着いているという印象になります。実務的な利点も2つあります。ひとつは目印になること。工業団地で場所を説明するとき、色は住所より確実です。もうひとつは採用面です。工場の外観は応募者が最初に見る職場の姿で、入りやすそうに見えるかどうかは実際に効きます。ただし赤系の顔料は褪色が最も早いので、フッ素系または無機塗料が絶対条件とお考えください。
Q5
隣の建物との隙間が狭い場所は、どう施工するのですか?
A. 足場の組み方と工程の順番で対応します。狭くて塗れないということはほとんどありません。今回の建物は右奥で隣の建物が接近しています。こうした場所では、通常の足場ではなく単管を組んだ簡易的な足場や幅の狭い足場を使います。人が横向きに入れる程度の隙間があれば施工できます。注意が必要なのは塗料の飛散です。隣の建物が近いほど飛沫が届くリスクが上がります。養生を隣地側に厚くかけ、風の強い日は吹き付けを避けてローラー仕上げに切り替えるといった判断をします。隣地の所有者への事前の挨拶も必ず行います。もうひとつ、狭小部は水はけと風通しが悪く、苔や錆が出やすい場所でもあります。今回の建物でも植栽側の足元に苔が出ています。見えにくい場所こそ傷みが進みやすいので、足場を架けたこの機会に防藻性能のある塗料でしっかり仕上げておくことをおすすめします。
塗装前写真から作る塗装デザイン
3つの仕上がりイメージ
デザイン案
design concept
平屋の建物は、外壁と同じくらい屋根と鉄骨が見えています。2階建てならパラペットに隠れる屋根の面が、平屋では道路からそのまま目に入り、庇を支える鉄骨も目線の高さで丸見えです。そのうえで、壁・屋根・鉄骨の3つをどう組み合わせるか。暖色でまとめて骨組みを見せるか、濃色で塗り込んで塊にするか、色そのものを主役にするか。同じ建物でも印象がここまで変わります。
3つの塗装デザイン案
塗装デザイン.comでは、塗装前の外観写真をもとに、デザイナーが3つの塗装デザイン案(仕上がりイメージ)を作成し、完成イメージを共有してから進めます。
A
B
C
※掲載のデザイン案はイメージです。実際の仕上がりは
日当たり・素材・画面表示などにより見え方が異なります。
BEFORE
今回の対象は、縦張りの角波金属サイディングで仕上げた、平屋の工場・作業場です。左手の妻面から右方向に向かって、鉄骨の柱と方杖(ほうづえ)で支えられた深い下屋が長く伸びています。その下に大型シャッターが2連並び、シャッターの上には照明が取り付けられています。
左手には「事務所」の札が付いた片開きドアと小庇、アルミの引違い窓があり、郵便受けが壁に付いています。シャッターの前には黄色のガードポールが立ち、右奥には隣の建物が接近しています。
外壁全体はくすんだ灰白色に退色し、触ると白い粉が付くチョーキングが出ています。角波のリブ(縦の凹凸)に沿って黒い雨だれの縦筋が入り、下屋を支える鉄骨(柱・方杖・母屋・垂木)には白化が進んで継ぎ目やボルトまわりに点錆が出ています。波形の屋根材は色あせて面によって明るさが揃わなくなり、軒先の見切りと棟の役物も退色して屋根と壁の境目がぼやけています。竪樋には白化と汚れが出て留め金具まわりに錆が出はじめ、大型シャッターの下端とガイドレールにも軽い錆が見られます。事務所ドアと小庇の塗膜が劣化し、足元の植栽側に苔と黒ずみが付着しています。
この建物の特徴は、塗る対象が壁だけではないという点です。下屋の鉄骨は、この建物の外観にかなりの面積を占めています。柱、方杖、母屋、垂木。細い部材が何本も組まれているので、面積としては小さく見えても、視覚的な印象では壁と同じくらい効いています。そしてこの鉄骨は、雨がかかり、日が当たり、しかも塗膜が薄く塗られていることが多いため、建物のなかで最初に錆びる場所でもあります。
さらに、平屋なので屋根が正面から見えます。2階建てなら隠れる屋根の面が、この建物では外観の一部です。屋根が色あせたままだと、壁をどれだけきれいに塗っても建物全体が古く見えます。逆に言えば、屋根の色を変えるだけで印象が大きく動く建物でもあります。今回の状態は、鉄骨の錆がまだ点錆にとどまっていて、屋根材にも割れが出ていない、いちばん費用対効果の高いタイミングです。
ここから
下屋の鉄骨をケレンして錆止めを入れ、点錆のうちに進行を止める
正面から見える屋根の面まで含めて、外観としてまとめる
鉄骨を濃色で見せるか、壁と同色に溶かすかを決める
足元と狭小部の苔を洗浄・除藻してから、防藻性能のある塗料で仕上げる
塗装は、錆を止めて建物を守るだけでなく、会社の印象を整える手段でもあります。
AFTER
— デザイン A —
クリームベージュ×ブラウンで
暖色にまとめて、鉄骨を「骨組み」として見せる
CONCEPT
外壁をクリームベージュ(やわらかい黄みの明色)で塗り、下屋の鉄骨・軒先の見切り・竪樋・事務所の小庇とドアをブラウン、大型シャッターをダークブラウン、屋根をテラコッタブラウンでまとめた配色です。
建物全体を暖色系で統一した、いちばん穏やかな方向にまとめています。
この案の狙いは、下屋の鉄骨を隠すのではなく見せることです。ビフォアでは、鉄骨も壁も同じ灰白色に退色しているので、構造が壁に溶けてしまって何がどう建っているのか読めません。ここに壁より濃いブラウンを入れると、柱・方杖・垂木が建物の骨組みとしてくっきり浮かび上がります。細い部材が規則正しく並んでいる姿は、それ自体が意匠になります。木造の下屋を思わせる落ち着きが出て、町工場らしい実直さがそのまま良さとして見えるようになります。もうひとつの要点は、屋根をテラコッタブラウンにしていることです。平屋は屋根が見えるので、ここが灰色のままだと建物の上半分が沈みます。壁のクリームベージュと同じ暖色系で少し濃い色を屋根に置くと、建物が上下でつながって一体感が出ます。近隣に住宅がある立地でも通りやすい配色です。
この案が向く方
✔ 近隣に住宅があり、建物の圧迫感を抑えたい
✔ 下屋の鉄骨を、古びた部分ではなく意匠として見せたい
✔ 明るく親しみやすい印象にしたい
✔ 屋根まで含めて、まとまりのある外観にしたい
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁(角波金属サイディング)
クリームベージュで面をまとめ、工場まわりの土埃や泥はねと色の系統を揃えて汚れを浮かせない
下屋の鉄骨・屋根
鉄骨をブラウンで浮かび上がらせて柱と方杖を意匠として見せ、屋根はテラコッタブラウンで壁と同じ暖色系につなげる
シャッター・小庇・ドア・竪樋
雨がかかり汚れの集まる場所をすべて濃いブラウンで受け、付帯部の色を散らさず一本の系統にまとめる
おすすめの艶(ツヤ)
3分艶
角波の金属サイディングは縦のリブが等間隔に並んでいるため、艶を上げるとリブの山ごとに光が線状に反射し、壁が縞模様に見えます。クリームベージュのような明るい暖色ではその反射がとくに白く飛びやすく、面ごとに色が違って見えます。艶を抑えると色が安定します。鉄骨のブラウンも同じ3分艶で揃えてください。細い部材だけ艶が高いと、そこだけ光って線が浮きます。
汚れの目立ちやすさ
工場まわりの汚れは、そのほとんどが茶色い色をしています。土埃、砂ぼこり、泥はね、排気。クリームベージュとブラウンはどちらもその汚れと色の系統が近いため、同じ年数が経ったときの見え方がいちばん穏やかなのがこの案です。
そして、雨がかかる場所がすべて濃色になっています。下屋の鉄骨、軒先の見切り、竪樋、シャッター。ここをブラウンで受けているので、汚れが出ても目立ちません。塗料はシリコン以上で成立します。ただし鉄骨部分だけは、ケレンと錆止めを省かないでください。今回の建物で最初に傷むのはここです。予算をグレードではなく鉄部の下地処理に厚く配分するのが、この案のいちばん賢い組み方です。
— デザイン B —
チャコールネイビー×ホワイトで
濃色で締めて、シャッターを白く抜く
CONCEPT
外壁と下屋の鉄骨、竪樋、事務所ドアまでチャコールネイビー(紺がかった深いグレー)で塗り込み、大型シャッター2連だけをホワイトで明るく抜いた配色です。屋根はダークグレーで壁になじませています。
建物の本体を一色で塗り込み、開口部だけを白で抜くという、いちばんシャープな構成です。
この案の要点は、鉄骨を壁と同じ色にしていることです。A案が鉄骨を見せる方向なら、こちらはあえて壁に溶かして、建物をひとつの塊として見せています。細い部材の線が消えるので、深く張り出した下屋がひさし全体でひとつの陰になり、建物の輪郭が非常にすっきりします。ビフォアで雑然として見えていた原因が、そのまま解消されます。そしてシャッター2連のブラックがこの案の主役です。濃色に塗り込んだ壁のなかに黒い四角が2つ並ぶことで、開口部が明るい抜けとして強く読めます。平屋は建物の高さがないぶん横に長く見えますが、この白い2つの面が視線を受け止めるので間延びしません。チャコールネイビーは、黒ほど硬くならず、グレーより深みがあります。製造・整備・建設といった業種で、そのまま信頼感につながる色です。
この案が向く方
✔ 建物をすっきり見せて、雑然とした印象を消したい
✔ リブ沿いの黒い雨だれに、もう悩みたくない
✔ 落ち着いた色にしたいが、グレーやベージュでは物足りない
✔ 塗り替えを機に、企業イメージを引き締めたい
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁・下屋の鉄骨
壁と鉄骨を同じチャコールネイビーで塗り込み、細い部材の線を消して建物をひとつの塊として見せる
大型シャッター2連
ホワイトで明るく抜いて開口部を強く読ませ、横に長い平屋が間延びしないよう視線を受け止める
屋根・小庇・ドア・竪樋
屋根をダークグレーで壁になじませ、付帯部も本体色に揃えて面の分割をなくす
おすすめの艶(ツヤ)
艶消し〜3分艶
濃色は艶を上げるほど反射が強くなり、角波のリブごとに光が線状に走って壁が縞に見えます。とくにこの建物は下屋の下が影になるので、日の当たる面と影の面で艶の差が強調されます。艶を抑えると紺が深く沈み、白いシャッターのマットな表情とも自然につながります。この案は色より艶の設定で仕上がりが決まります。
汚れの目立ちやすさ
リブ沿いの黒い雨だれ、排気の黒ずみは、ほぼ完全に目立たなくなります。ビフォアの弱点に対しては、3案でもっとも効く配色です。
注意点は2つあります。ひとつは白い水アカやチョーキングの粉が目立つこと。もうひとつはホワイトのシャッターで、ここは泥はねとタイヤの巻き上げが最も集中する場所です。シャッターには必ず低汚染(親水性)塗料を指定してください。塗料はフッ素系または無機をおすすめします。濃紺系は褪色すると色が抜けて灰色に近づき、印象が一気に古びます。また金属外壁は表面温度が上がりやすいため、顔料への負担も大きくなります。平屋は屋根の面積が床面積とほぼ同じなので、屋根を遮熱仕様にすると濃色化による室内温度の上昇はしっかり抑えられます。
— デザイン C —
ダスティピンク×ホワイトで
工場でこそ効く、いちばん思い切った選択
CONCEPT
3案の中でもっとも思い切った選択です。外壁と下屋の鉄骨、竪樋、事務所ドアまでダスティピンク(灰みを含んだ、くすみのある淡いピンク)で塗り込み、大型シャッター2連をホワイトで抜きました。屋根はダークグレーで上端を締めています。
工場をピンクで塗る建物はほとんどありません。だからこそ、この建物は一度見たら忘れられません。
重要なのは、この色がかわいい色ではないということです。ここで使っているのは、彩度を落として灰色を混ぜたダスティピンクです。鮮やかなピンクは確かに建築には難しい色ですが、くすませたピンクは実はベージュやテラコッタと同じ暖色の淡色の仲間で、外壁として非常に扱いやすい色です。近年、店舗や事務所建築で使われることが増えているのもそのためです。遠目にはやわらかいベージュに近く、近づくと確かにピンクである、という見え方をします。設計上の要点は、シャッターと屋根で色を締めていることです。ピンク一色だと建物が軽くなりすぎますが、屋根をダークグレーにすることで上端が締まり、白いシャッターが正面に緊張感をつくります。淡い色を使うときほど、濃色をどこに置くかが仕上がりを決めます。女性スタッフの多い職場、食品・衣料・美容関連、見学のある工場では、この色が想像以上に効きます。
この案が向く方
✔ 塗り替えを機に、企業イメージごと刷新したい
✔ 周囲の白やグレーの工場の中で埋もれたくない
✔ 採用や見学を意識して、入りやすい職場に見せたい
✔ 建物を看板・ブランディングの一部として使いたい
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁・下屋の鉄骨
彩度を落としたダスティピンクで壁と鉄骨をまとめ、遠目にはベージュに近く近づくとピンクと分かる見え方にする
屋根(波形屋根材)
ダークグレーで建物の上端を締め、淡色一色になって軽くなりすぎるのを防ぐ
大型シャッター2連
ホワイトで抜いて正面に緊張感をつくり、淡いピンクの面が締まりなく広がるのを止める
おすすめの艶(ツヤ)
3分艶
淡いピンクは艶を上げると光の当たり方で白く飛び、せっかくの色が抜けて見えます。逆に艶を落としすぎると、退色したビフォアの灰白色に近づいて見えます。3分艶が、色が最も正しく見える設定です。角波のリブの陰影も素直に出て、淡色でも壁が平べったくなりません。
汚れの目立ちやすさ
淡色なので、黒い雨だれの筋は3案でいちばん見えます。低汚染(親水性)塗料の指定は必須とお考えください。雨が汚れを流し落とすので、淡色の弱点は実用レベルまで抑えられます。角波のリブが縦に通っていて水が縦に流れ落ちる形状なので、自浄効果は出やすい建物です。
そしていちばん重要なのが塗料グレードです。ピンク系(赤系)の顔料は、すべての色のなかで最も褪色が早い色です。グレードの低い塗料を使うと数年で色が抜けて薄汚れたベージュに寄り、この案の価値が失われます。必ずフッ素系または無機塗料+高耐候顔料を指定してください。なお、下屋の鉄骨まで同じピンクで塗るので、鉄部の錆止め工程が仕上がりに直結します。錆の上から淡色を乗せると、数年後に錆が透けて茶色い染みとして浮きます。ケレンと錆止めは、この案でこそ省けません。
POINT
色選びのポイント
3案を選ぶ基準
A〜Cで迷うときは、「この建物を、誰に向けて整えるのか」という視点で考えると決めやすくなります。近隣の目か、取引先の目か、これから働く人の目か。
デザインA
クリームベージュ×ブラウン
穏やか・親しみやすい
・下屋の鉄骨が意匠として立つ
デザインB
チャコールネイビー×ブラック
引き締まった・信頼感がある
・リブ沿いの黒い筋が完全に消える
デザインC
ダスティピンク×ホワイト
個性的・記憶に残る
・採用や見学の印象に効く
また、色だけでなく艶(ツヤ)・塗料グレード・屋根の遮熱の有無・鉄部の下地処理まで含めて決めると、仕上がりの満足度が上がりやすくなります。特にB案・C案のように色そのものが価値になる配色では、塗料のグレードが仕上がりの寿命を直接左右します。
失敗しにくいコツ
平屋の工場では、壁だけを見て色を決めないことです。
この建物は、屋根も下屋の鉄骨も道路から見えています。壁・屋根・鉄骨の3つをセットで考えて初めて、外観は本当に新しくなります。外壁だけを新品の色にすると、その隣に色あせた屋根と錆の浮いた鉄骨が並び、前より古く見えてしまいます。足場を架けるのは一度、そのときにどこまで手を入れるかで次の10年が決まります。
Q&A
よくある質問
Q1
予算の都合で、外壁だけ塗ることはできますか?
A. できますが、この建物ではおすすめしません。理由は見えているからです。2階建ての建物なら、屋根はパラペットの陰に隠れて道路からほとんど見えないので、外壁優先という判断が成り立ちます。しかし今回のような平屋は、屋根の面と下屋の鉄骨が目線の高さでそのまま見えています。外壁だけを新品の色にすると、その隣で色あせた屋根と錆の浮いた鉄骨が並ぶことになります。新しいものの隣に置かれた古いものは、前より古く見えます。塗り替えたのにあまり変わらないねと言われるのは、たいていこのパターンです。もうひとつ実務的な理由があります。足場は一度しか架けません。外壁だけ塗って数年後に鉄骨と屋根を塗ると、足場代をもう一度払うことになります。同じ予算を使うなら、塗料のグレードを一段下げてでも壁・屋根・鉄骨を一度に仕上げるほうが、結果的に安くきれいに見えます。
Q2
下屋を支えている鉄骨は、必ず塗る必要がありますか?
A. 必要です。この建物でいちばん先に傷むのがこの鉄骨だからです。理由は3つあります。ひとつめは部材が細く塗膜が薄いこと。柱・方杖・母屋・垂木といった部材は面積あたりの角(エッジ)が多く、角の部分は塗料が乗りにくいためそこから錆が始まります。ふたつめは雨がかかり続けること。屋根の下にありながら、横殴りの雨や跳ね返りをまともに受けます。みっつめは接合部があること。ボルト、溶接部、部材の重なり。水が溜まって抜けない場所が構造上たくさんあり、そこが錆の起点になります。工程としては、錆を工具で削り落とし(ケレン)、錆止め専用の下塗りを入れてから上塗りという順です。細かい部材が多いので手間はかかりますが、ここを飛ばした塗装は数年で錆が浮いて全部やり直しになります。今回の建物は点錆の段階なので、完全に止められます。
Q3
屋根はどうやって塗るのですか? 葺き替えは必要ですか?
A. 割れや穴がなければ、塗装で十分です。波形の屋根材や折板屋根は、高圧洗浄で表面の苔と旧塗膜を落とし、下塗り(シーラー)を入れてから上塗り2回という工程で仕上げます。今回の屋根は色あせが出ていますが、割れ・欠け・穴は見当たらないので塗装で対応できる状態です。葺き替えや重ね葺き(カバー工法)が必要になるのは、屋根材が割れている、下地の野地板や母屋まで傷んでいる、雨漏りが実際に起きているという場合です。この段階まで進むと費用が塗装の数倍になります。なお、古い工場の波形屋根材には石綿(アスベスト)を含むものがあります。含有している場合、割ったり削ったりすると飛散するため、塗装で封じ込めるほうが安全で費用も抑えられます。調査のうえでご提案します。平屋は屋根の面積が床面積とほぼ同じです。屋根を遮熱塗料で仕上げると、夏場の室内温度に体感ではっきり差が出ます。
Q4
ピンクのような色を工場に使って、本当に大丈夫でしょうか?
A. 大丈夫です。ただしどのピンクかで結果が変わります。避けるべきは彩度の高い鮮やかなピンクです。大きな面に使うと色が主張しすぎて建物が浮きます。今回のC案で使っているのは、灰色を混ぜて彩度を落としたダスティピンクです。これは色の系統としてはベージュやテラコッタと同じ暖色の淡色で、外壁材として長く使われてきた色域に入ります。遠目にはやわらかいベージュに近く見え、近づいて初めてピンクだと分かるという見え方をします。奇抜さではなく、見慣れないけれど落ち着いているという印象になります。実務的な利点も2つあります。ひとつは目印になること。工業団地で場所を説明するとき、色は住所より確実です。もうひとつは採用面です。工場の外観は応募者が最初に見る職場の姿で、入りやすそうに見えるかどうかは実際に効きます。ただし赤系の顔料は褪色が最も早いので、フッ素系または無機塗料が絶対条件とお考えください。
Q5
隣の建物との隙間が狭い場所は、どう施工するのですか?
A. 足場の組み方と工程の順番で対応します。狭くて塗れないということはほとんどありません。今回の建物は右奥で隣の建物が接近しています。こうした場所では、通常の足場ではなく単管を組んだ簡易的な足場や幅の狭い足場を使います。人が横向きに入れる程度の隙間があれば施工できます。注意が必要なのは塗料の飛散です。隣の建物が近いほど飛沫が届くリスクが上がります。養生を隣地側に厚くかけ、風の強い日は吹き付けを避けてローラー仕上げに切り替えるといった判断をします。隣地の所有者への事前の挨拶も必ず行います。もうひとつ、狭小部は水はけと風通しが悪く、苔や錆が出やすい場所でもあります。今回の建物でも植栽側の足元に苔が出ています。見えにくい場所こそ傷みが進みやすいので、足場を架けたこの機会に防藻性能のある塗料でしっかり仕上げておくことをおすすめします。