A. 錆汁(さびじる)です。汚れではありません。茶色い筋が垂れているのは、その筋の上に錆の発生源があるという意味です。この建物の場合は、大庇の鼻先の水平材、パラペットの笠木の留め具、2階の連窓まわりの見切り。これらの鋼製部材が錆びて、雨がその錆を溶かして壁面に流し落としています。ここで大事なのは、筋が垂れている壁そのものはまだ傷んでいないということです。壁は被害者です。壁だけを塗り直しても、上の発生源が残っていれば1〜2年でまた同じ場所に同じ筋が出ます。工程としては、錆を工具で削り落とし(ケレン)、錆止め専用の下塗りを入れてから上塗りという順です。この建物はまだ母材に穴があくところまで進んでいないので、この工程で完全に止められます。逆にあと数年放置すると板厚が減り、部材の交換が必要になります。費用が一桁変わる分かれ目が、この段階です。
Q2
金属サイディングは、何年くらいで塗り替えるのがいいですか?
A. 目安は15年前後ですが、年数より状態で判断してください。判断基準は3つあります。ひとつめはチョーキング。壁を手でこすって白い粉が付いたら、塗膜が寿命を迎えたサインです。今回の建物はこの状態が出ています。ふたつめは錆。金属サイディングは塗膜が切れると母材が直接雨に触れて錆が始まります。錆汁が出ているということはすでに錆が発生しているということなので、これが出たら年数に関係なく検討時期です。みっつめは色ムラ。面によって明るさが揃わなくなってきたら、退色が進んでいます。金属外壁が住宅のサイディングと違うのは、放置したときの行き着く先が穴だという点です。窯業系サイディングなら塗膜が切れても板が割れるまでに時間がありますが、金属は錆が進めば板そのものが無くなります。そうなると塗装では対応できず張り替えになります。今回の建物は、塗装で十分に間に合う段階です。
Q3
倉庫を濃い色にすると、中が暑くなりませんか?
A. なります。ただし対策で十分に打ち消せます。濃い色は日射を吸収するので、金属サイディングの表面温度は確実に上がります。とくにA案のディープグリーンとC案のブラウンは、この影響を受ける配色です。対策は2つあります。ひとつめは屋根の遮熱です。そもそも建物に入ってくる熱の大半は壁ではなく屋根からです。屋根を遮熱塗料で仕上げると、壁を濃色にした分の上昇は十分に相殺できます。倉庫は天井が高く熱が上部にたまる構造なので、遮熱の効果が体感ではっきり出る建物です。ふたつめは壁への遮熱塗料の採用です。近年は濃色でも日射反射率を確保した遮熱塗料が各メーカーから出ています。濃い色にしたいが暑いのは困るという要望は、塗料の選定で解決できる時代になっています。なお、庫内の荷物に温度管理が必要な場合は遠慮なくお伝えください。その条件が最初に分かっていれば、色の候補と塗料の組み合わせを最初からそこに合わせて設計します。
Q4
大型シャッターも一緒に塗れますか?
A. 塗れます。ただし壁とは工程がまったく違います。注意点は3つあります。ひとつめは厚塗りができないこと。シャッターのスラット(板)は巻き取るときに1枚ずつ重なります。塗膜を厚くしすぎると、巻き取ったときにスラット同士がくっついて開閉時に塗膜が剥がれます。そのため壁よりも薄く均一に仕上げる必要があり、吹き付けで仕上げるのが基本です。ふたつめは可動部と巻き取り部。ガイドレールの内側やシャフトまわりは塗料が入ると動きが悪くなるため、ここは養生して塗らないという判断をします。みっつめは乾燥時間です。塗ってすぐ巻き上げると必ず傷むため、シャッターを塗る日はそのシャッターを半日から1日使えません。今回は2連あるので、片方ずつ日をずらして施工すれば荷物の出し入れを止めずに進められます。なおシャッターの下端とガイドレールに錆が出ているので、ケレンと錆止めを入れた上での塗装をおすすめします。シャッターは面積が大きく正面の中心にあるので、ここが古いままだと建物全体が古く見えます。
Q5
営業しながら工事できますか? 荷物の出し入れは止まりますか?
A. できます。止まる時間は工程の組み方でほぼゼロにできます。倉庫の塗装で実際に支障が出るのは3つの場面だけです。ひとつめは高圧洗浄の日。水と汚れが飛ぶので洗浄する面の前では作業ができませんが、1日から2日で終わります。ふたつめはシャッターを塗る日。塗ったシャッターは半日から1日使えないため、2連あるので片方ずつずらして施工します。みっつめは吹き付けで塗装する日。塗料が飛散するのでその面の前に車を置けません。トラックの駐車位置を工程に合わせて事前に打ち合わせしておきます。それ以外の期間は、足場が架かった状態でもシャッターからの出入りは通常どおりできます。足場は開口部を避けて組み、出入口の前には通行できる高さを確保します。大事なのは、着工前にいつ・どの面を・どの工法で塗るかの日程表をお渡しすることです。ここが共有されていれば荷物の予定を先に組めます。工事の日程が読めないから困るというのが、事業用建物の塗装でいちばん多い不満です。塗装デザイン.comでは工程表を事前にお出しして、御社の予定に合わせて順番を調整します。
塗装前写真から作る塗装デザイン
3つの仕上がりイメージ
デザイン案
design concept
倉庫は、住宅よりもはるかに壁の面積が大きい建物です。窓が少なく、凹凸も少なく、2階建てなら壁一面が道路からまるごと見えます。つまり、色を変えたときの印象の差が、住宅よりもずっと大きく出ます。その大きな面をどの色で塗り、深い庇と付帯部をどう締めるか。濃い緑で建物そのものを主役にするか、中間色で落ち着かせるか、暖色の濃色で重厚にまとめるか。同じ建物でも印象がここまで変わります。
3つの塗装デザイン案
塗装デザイン.comでは、塗装前の外観写真をもとに、デザイナーが3つの塗装デザイン案(仕上がりイメージ)を作成し、完成イメージを共有してから進めます。
A
B
C
※掲載のデザイン案はイメージです。実際の仕上がりは
日当たり・素材・画面表示などにより見え方が異なります。
BEFORE
今回の対象は、縦張りの角波金属サイディングで仕上げた、2階建ての倉庫です。正面の妻壁が途中で緩く折れた特徴的な形(腰折れ)をしていて、その下に正面いっぱいに張り出した深い大庇が水平に伸びています。庇の下には大型シャッターが2連並び、庇の天井には照明が取り付けられています。
庇の上、2階部分には横長の連窓(3連のアルミサッシ)が2箇所あり、右手には事務所の片開きドアと小庇、右側面には縦長・横長の窓が並んでいます。シャッターの前には黄色のガードポールが3本立ち、右側面には太い丸型の竪樋が2本、足元に室外機と電気の分電盤が付いています。敷地は広くアスファルト舗装され、右奥は低木の植栽とブロック塀で隣地と区切られています。
外壁全体はくすんだ灰白色に退色し、触ると白い粉が付くチョーキングが出ています。大庇の鼻先(水平材)と2階の連窓の下からは、茶色い錆汁の縦筋が何本も垂れています。角波のリブ(縦の凹凸)に沿って黒い雨だれの筋が入り、パラペットの笠木と軒先の役物が退色して壁との境目がぼやけています。竪樋には白化が出て留め金具まわりに錆が出はじめ、大型シャッターの下端とガイドレールにも錆が見られます。事務所ドアの小庇は塗膜が劣化して金属面が露出しかけ、足元の土間との取り合いと植栽側に黒ずみと苔が付着しています。
この建物でいちばん気になるのは、庇まわりと窓下から垂れている茶色い筋です。これは汚れではなく錆汁で、鋼製の部材が錆び、その錆が雨で流れ落ちた跡です。つまり、垂れている場所そのものではなく、その上に錆の発生源があります。大庇の鼻先、笠木の留め具、窓まわりの見切り。塗るだけでは止まりません。発生源を削り落として錆止めを入れて初めて止まります。
そしてもうひとつ、この建物の設計上の特徴が大庇の深さです。正面いっぱいに張り出しているため、シャッターの周辺には常にはっきりとした影ができます。ここは光が回りません。日の当たる2階の壁と、影になった1階の壁では、同じ色でもまったく違う色に見えます。色を決めるときは、この明暗差を前提に考える必要があります。今回の状態は、錆汁は出ているものの母材に穴があくところまでは進んでいない、いちばん費用対効果の高いタイミングです。
ここから
庇の鼻先・笠木・窓の見切りをケレンして錆止めを入れ、錆汁を発生源から止める
面積の大きい壁を、周囲の建物のなかでどう見せたいかから逆算して決める
深い庇が落とす影を計算に入れて、艶(ツヤ)の設定を決める
シャッター・竪樋・笠木まで、付帯部の色を一本の系統にまとめる
塗装は、錆を止めて建物を守るだけでなく、会社の印象を整える手段でもあります。
AFTER
— デザイン A —
ディープグリーン×ダークブラウンで
濃い緑で、倉庫を「会社の顔」に変える
CONCEPT
外壁をディープグリーン(深く落ち着いた緑)で塗り、大庇の鼻先・軒天・パラペットの笠木・竪樋・事務所の小庇をダークブラウン、大型シャッター2連をダークグレーでまとめた配色です。
3案のなかで、もっとも色そのものが主役になる方向にまとめています。
この案の狙いは、建物を倉庫から会社の建物に、見せ方ごと変えることです。ビフォアの灰白色は、工業団地のなかでは最も多い色です。つまり周囲と同じで、どこからどこまでが自社の建物なのかが読めません。ここに深い緑を入れると、建物の輪郭が一気にはっきりします。遠くからでも「あの緑の建物」で通じるようになり、取引先への場所の説明が住所より確実になるという実務的な効果もあります。緑は、倉庫・工場でとくに相性のいい色です。空の青、植栽の緑、アスファルトのグレー。この建物のまわりにある色と喧嘩しません。しかも彩度を落とした深い緑は、鮮やかな原色のような主張をせず、時間が経っても古びません。設計上の要点は、大庇まわりをすべてダークブラウンで受けていることです。緑の壁に対して庇の鼻先と笠木と竪樋を茶系の濃色で締めると、建物の水平ラインがくっきり通ります。この建物は庇が正面いっぱいに伸びているので、そのラインが通るかどうかで見え方がまったく変わります。ビフォアで庇が壁に溶けてぼやけていた部分が、意匠としての庇に見えるようになります。さらに、錆汁が垂れていた場所がすべて濃色になるため、将来わずかに錆が出ても色の系統が近く目立ちません。
この案が向く方
✔ 塗り替えを機に、建物で会社を覚えてもらいたい
✔ 工業団地のなかで、白やシルバーの建物に埋もれたくない
✔ 錆汁や黒い雨だれに、もう悩みたくない
✔ 落ち着いた色にしたいが、グレーやベージュでは物足りない
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁(角波金属サイディング)
ディープグリーンで大きな面をまとめ、周囲の白やシルバーの建物のなかで自社の建物として輪郭を立たせる
大庇・パラペット笠木
ダークブラウンで受けて正面いっぱいに伸びる水平ラインを通し、ぼやけていた庇を意匠として見せる
シャッター・竪樋・小庇
錆汁が垂れていた場所をすべて濃色で受け、付帯部の色を散らさず一本の系統にまとめる
おすすめの艶(ツヤ)
艶消し〜3分艶
濃色は艶を上げるほど反射が強くなり、角波のリブの山ごとに光が線状に走って壁が縞模様に見えます。この建物はとくに壁の面積が大きいので、縞が出ると面全体が落ち着きません。もうひとつ、深い庇が落とす影の存在があります。日の当たる2階の壁と庇の下の1階の壁では、艶が高いほどその明暗差が反射の差として強調され、同じ色なのに上下で別の色に見えます。艶を落とすと緑が深く沈み、この差も穏やかになります。
汚れの目立ちやすさ
錆汁の茶色い筋、リブ沿いの黒い雨だれ、排気の黒ずみ。ビフォアで目立っていた汚れは、ほぼ完全に見えなくなります。濃色のなかでも緑は、汚れの色(茶・黒・灰)とぶつかりにくい色です。
注意点は塗料のグレードです。緑系の顔料は、赤系ほどではないものの褪色しやすい色域に入ります。グレードの低い塗料を使うと数年で色が抜けて薄い灰緑に寄り、この案の価値が失われるため、フッ素系または無機塗料をおすすめします。また金属サイディングは表面温度が上がりやすい素材で、濃色にするとさらに上がります。屋根と、可能なら壁の一部にも遮熱仕様を入れておくと、夏場の庫内温度の上昇をしっかり抑えられます。そして錆汁の発生源である庇まわり・笠木・窓の見切りは、ケレンと錆止めを省かないでください。濃色は錆を隠しますが、進行は止めません。隠れたまま進んで気づいたときには穴があいているというのが、金属外壁でいちばん多い失敗です。
— デザイン B —
オリーブカーキ×チャコールグレーで
汚れに最も強い、実務的な中間色
CONCEPT
外壁をオリーブカーキ(緑がかった、彩度の低いベージュ)で塗り、大庇の鼻先・軒天・パラペットの笠木・竪樋・事務所の小庇をチャコールグレー、大型シャッター2連をダークグレーでまとめた配色です。
明るすぎず暗すぎない中間の明度でまとめた、いちばん実務的な方向です。
この案の狙いは、10年後の見え方を基準に色を決めることです。外壁の汚れは、明るすぎる色にも暗すぎる色にも出ます。白は黒い筋が出て、濃紺や黒は白い水アカとチョーキングの粉が出ます。その両方から最も遠いのが、この中間の明度域です。オリーブカーキは、倉庫まわりで実際に付く汚れ、つまり土埃・砂ぼこり・泥はねと色の系統がほぼ同じなので、汚れが付いても色の差として認識されにくくなります。色としての性格も、この建物によく合っています。オリーブカーキは、工具や作業車、コンテナに古くから使われてきた色です。素っ気なくて、実直で、飽きない。倉庫という建物の性格にそのまま重なります。A案のように建物で目立たせる方向ではありませんが、周囲の白やシルバーのなかでは十分にはっきりと自社の建物として読めます。設計上の要点は、庇まわりをチャコールグレーで締めていることです。オリーブカーキは中間色なので、そのままだと面全体がぼんやりします。庇の鼻先と笠木、竪樋という水平・垂直のラインをグレーの濃色で通すことで、建物に骨格が出ます。茶系ではなくグレーを合わせているのは、オリーブカーキの緑みを引き立てるためです。茶を合わせると全体が濁り、グレーを合わせると壁の色が澄んで見えます。
この案が向く方
✔ 10年後の見え方まで含めて、汚れに強い色にしたい
✔ 塗料のグレードを上げずに、コストを抑えて成立させたい
✔ 倉庫らしい実直な印象は残したい
✔ 濃色にして庫内が暑くなるのは避けたい
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁(角波金属サイディング)
オリーブカーキで中間の明度に置き、黒い雨だれと白いチョーキングの粉のどちらからも遠い色域にまとめる
大庇・パラペット笠木・竪樋
チャコールグレーで水平・垂直のラインを通して骨格をつくり、中間色の面がぼんやりするのを防ぐ
大型シャッター2連・小庇
ダークグレーで泥はねとタイヤの巻き上げが集中する足元を受け、壁の中間色を汚れから切り離す
おすすめの艶(ツヤ)
3分艶
中間色は、艶によって見え方がいちばん大きく動く明度域です。艶を上げるとリブの反射で色が白く飛び、せっかくの落ち着きが抜けます。逆に艶を落としすぎると、退色したビフォアの灰白色に近い印象になり、塗り替えたのに変わらないと感じる原因になります。3分艶が、オリーブカーキの緑みが最も正しく出る設定です。庇のチャコールグレーも同じ3分艶で揃えてください。付帯部だけ艶が高いと、そこだけ光って浮きます。
汚れの目立ちやすさ
3案のなかで、経年後の見え方がいちばん安定するのがこの案です。黒い雨だれの筋も白いチョーキングの粉も、どちらも目立ちにくい明度にあります。倉庫まわりの土埃や泥はねとも色の系統が近く、同じ年数が経ったときの汚れて見える度合いが最も低くなります。
塗料はシリコン以上で成立します。低彩度の中間色は顔料の褪色も緩やかで、グレードを一段上げなくても色が保ちます。3案のなかで費用対効果がいちばん高いのがこの案です。ただし、錆汁の発生源の処理だけはこの案でも省けません。むしろ中間色は錆の茶色と明度が近いため、錆が再発したときに壁が汚れてきたように見えて発見が遅れます。庇まわりと笠木のケレン・錆止めは、必ず工程に入れてください。なお遮熱の観点ではこの案が最も有利で、中間の明度は日射の反射率が確保しやすく、濃色化による庫内温度の上昇をそもそも起こしません。
— デザイン C —
ブラウン×ダークブラウンで
暖色の濃色で、建物に重さを出す
CONCEPT
外壁をブラウン(赤みを含んだ中濃度の茶)で塗り、大庇の鼻先・軒天・パラペットの笠木・竪樋・事務所の小庇をダークブラウン、大型シャッター2連をこげ茶がかったダークグレーでまとめた配色です。
建物全体を茶系の濃淡だけで構成した、いちばん重厚な方向です。
この案の狙いは、倉庫に重さを出すことです。金属サイディングの建物は、どうしても軽く、仮設的に見えます。板が薄いことがそのまま印象に出てしまう素材です。そこに暖色の濃色を乗せると面に厚みが出て、同じ建物とは思えないほどどっしりと見えるようになります。木造の倉庫や蔵が持っていた重さに近い印象です。そしてこの案は、同系色の濃淡だけで組んでいるという点がA案・B案と決定的に違います。壁がブラウン、庇と笠木と竪樋がダークブラウン、シャッターがさらに濃い茶グレー。色相を一本に絞って、明度の差だけで面を分けています。この組み方をすると建物が分割されず、ひとつの塊として読めます。この建物は妻壁が途中で折れた複雑な形をしていますが、色を一本化することで、その形の複雑さが彫りの深さとして見えるようになります。もうひとつの利点が汚れとの関係です。倉庫まわりに付く汚れは、そのほとんどが茶色い色をしています。土埃、砂ぼこり、泥はね、排気。ブラウンはその汚れと色の系統が完全に一致しているため、汚れが付いても汚れとして認識されません。この建物でいちばんの弱点だった錆汁の茶色い筋も、錆の色と壁の色が同じ系統なので目立たなくなります。
この案が向く方
✔ 金属サイディングの軽い印象を消して、建物に重厚感を出したい
✔ 建物の形を分割せず、ひとつの塊としてまとめたい
✔ 錆汁や土埃の汚れを、いちばん確実に目立たなくしたい
✔ 周囲に住宅があり、落ち着いた色でまとめたい
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁(角波金属サイディング)
ブラウンで面に厚みを出し、薄い金属板という素材の軽さを消して建物に重さを与える
大庇・パラペット笠木・竪樋
ダークブラウンで壁と同じ色相の濃淡だけに絞り、腰折れした妻壁の形を彫りの深さとして見せる
大型シャッター2連
こげ茶がかったダークグレーで最も濃くし、正面の中心を沈めて建物全体の重心を下げる
おすすめの艶(ツヤ)
3分艶
茶系の濃色は、艶を上げると赤みが強く出て面が安っぽく見えます。艶を抑えると赤みが沈み、土や木に近い落ち着いた発色になります。この案が狙っている重さは、艶を落とすことで初めて出ます。庇のダークブラウンも同じ3分艶で揃えてください。同系色の濃淡で組んでいる配色なので、艶が揃っていないと、色の違いではなく艶の違いとして面が分かれて見えます。この案は、色よりも艶の統一で仕上がりが決まります。
汚れの目立ちやすさ
3案のなかで、錆汁と土埃に対していちばん強いのがこの案です。汚れの色と壁の色が同系統なので、経年しても印象がほとんど変わりません。
塗料はシリコン以上で成立します。ブラウンに使われる酸化鉄系の顔料は、すべての顔料のなかでもっとも耐候性が高い部類で、褪色の心配が少なくグレードを上げなくても色が保ちます。注意点は温度です。濃い暖色は日射の吸収率が高く、金属サイディングの表面温度がかなり上がります。倉庫の内部に温度管理の必要な荷物がある場合は、屋根に遮熱塗料を入れ、必要なら壁側にも遮熱仕様を検討してください。そして錆汁の発生源の処理です。この案は錆を最も見えなくする配色ですが、見えないことと進行していないことは別です。むしろ錆が出ても分からないからこそ、庇まわり・笠木・窓の見切りのケレンと錆止めは、この案でこそ確実に行ってください。
POINT
色選びのポイント
3案を選ぶ基準
A〜Cで迷うときは、「この建物に、何を期待するのか」という視点で考えると決めやすくなります。覚えてもらうことか、長く手がかからないことか、きちんと見えることか。
デザインA
ディープグリーン×ダークブラウン
個性的・記憶に残る
・建物が会社の目印になる
デザインB
オリーブカーキ×チャコールグレー
実直・落ち着いている
・経年後の見え方が最も安定する
デザインC
ブラウン×ダークブラウン
重厚・どっしりしている
・錆汁と土埃が最も目立たない
また、色だけでなく艶(ツヤ)・塗料グレード・遮熱の有無・鉄部の下地処理まで含めて決めると、仕上がりの満足度が上がりやすくなります。特にA案のように色そのものが価値になる配色では、塗料のグレードが仕上がりの寿命を直接左右します。
失敗しにくいコツ
倉庫では、無難な色を選ばないことです。
この建物は壁の面積が大きく、色の影響が住宅よりずっと強く出ます。その大きな面を白やシルバーで塗っても、周囲の建物と同じになるだけで印象は残りません。面積が大きいというのは、色を選ぶ側にとっては最大の武器です。そしてもうひとつ、大きな面ほど色は面積効果で明るく鮮やかに見えます。小さな色見本で決めず、必ず大きめの板見本を現場に持ち込み、日の当たる面と庇の下の影の両方で確認してください。
Q&A
よくある質問
Q1
庇まわりや窓の下から垂れている茶色い筋は、何ですか?
A. 錆汁(さびじる)です。汚れではありません。茶色い筋が垂れているのは、その筋の上に錆の発生源があるという意味です。この建物の場合は、大庇の鼻先の水平材、パラペットの笠木の留め具、2階の連窓まわりの見切り。これらの鋼製部材が錆びて、雨がその錆を溶かして壁面に流し落としています。ここで大事なのは、筋が垂れている壁そのものはまだ傷んでいないということです。壁は被害者です。壁だけを塗り直しても、上の発生源が残っていれば1〜2年でまた同じ場所に同じ筋が出ます。工程としては、錆を工具で削り落とし(ケレン)、錆止め専用の下塗りを入れてから上塗りという順です。この建物はまだ母材に穴があくところまで進んでいないので、この工程で完全に止められます。逆にあと数年放置すると板厚が減り、部材の交換が必要になります。費用が一桁変わる分かれ目が、この段階です。
Q2
金属サイディングは、何年くらいで塗り替えるのがいいですか?
A. 目安は15年前後ですが、年数より状態で判断してください。判断基準は3つあります。ひとつめはチョーキング。壁を手でこすって白い粉が付いたら、塗膜が寿命を迎えたサインです。今回の建物はこの状態が出ています。ふたつめは錆。金属サイディングは塗膜が切れると母材が直接雨に触れて錆が始まります。錆汁が出ているということはすでに錆が発生しているということなので、これが出たら年数に関係なく検討時期です。みっつめは色ムラ。面によって明るさが揃わなくなってきたら、退色が進んでいます。金属外壁が住宅のサイディングと違うのは、放置したときの行き着く先が穴だという点です。窯業系サイディングなら塗膜が切れても板が割れるまでに時間がありますが、金属は錆が進めば板そのものが無くなります。そうなると塗装では対応できず張り替えになります。今回の建物は、塗装で十分に間に合う段階です。
Q3
倉庫を濃い色にすると、中が暑くなりませんか?
A. なります。ただし対策で十分に打ち消せます。濃い色は日射を吸収するので、金属サイディングの表面温度は確実に上がります。とくにA案のディープグリーンとC案のブラウンは、この影響を受ける配色です。対策は2つあります。ひとつめは屋根の遮熱です。そもそも建物に入ってくる熱の大半は壁ではなく屋根からです。屋根を遮熱塗料で仕上げると、壁を濃色にした分の上昇は十分に相殺できます。倉庫は天井が高く熱が上部にたまる構造なので、遮熱の効果が体感ではっきり出る建物です。ふたつめは壁への遮熱塗料の採用です。近年は濃色でも日射反射率を確保した遮熱塗料が各メーカーから出ています。濃い色にしたいが暑いのは困るという要望は、塗料の選定で解決できる時代になっています。なお、庫内の荷物に温度管理が必要な場合は遠慮なくお伝えください。その条件が最初に分かっていれば、色の候補と塗料の組み合わせを最初からそこに合わせて設計します。
Q4
大型シャッターも一緒に塗れますか?
A. 塗れます。ただし壁とは工程がまったく違います。注意点は3つあります。ひとつめは厚塗りができないこと。シャッターのスラット(板)は巻き取るときに1枚ずつ重なります。塗膜を厚くしすぎると、巻き取ったときにスラット同士がくっついて開閉時に塗膜が剥がれます。そのため壁よりも薄く均一に仕上げる必要があり、吹き付けで仕上げるのが基本です。ふたつめは可動部と巻き取り部。ガイドレールの内側やシャフトまわりは塗料が入ると動きが悪くなるため、ここは養生して塗らないという判断をします。みっつめは乾燥時間です。塗ってすぐ巻き上げると必ず傷むため、シャッターを塗る日はそのシャッターを半日から1日使えません。今回は2連あるので、片方ずつ日をずらして施工すれば荷物の出し入れを止めずに進められます。なおシャッターの下端とガイドレールに錆が出ているので、ケレンと錆止めを入れた上での塗装をおすすめします。シャッターは面積が大きく正面の中心にあるので、ここが古いままだと建物全体が古く見えます。
Q5
営業しながら工事できますか? 荷物の出し入れは止まりますか?
A. できます。止まる時間は工程の組み方でほぼゼロにできます。倉庫の塗装で実際に支障が出るのは3つの場面だけです。ひとつめは高圧洗浄の日。水と汚れが飛ぶので洗浄する面の前では作業ができませんが、1日から2日で終わります。ふたつめはシャッターを塗る日。塗ったシャッターは半日から1日使えないため、2連あるので片方ずつずらして施工します。みっつめは吹き付けで塗装する日。塗料が飛散するのでその面の前に車を置けません。トラックの駐車位置を工程に合わせて事前に打ち合わせしておきます。それ以外の期間は、足場が架かった状態でもシャッターからの出入りは通常どおりできます。足場は開口部を避けて組み、出入口の前には通行できる高さを確保します。大事なのは、着工前にいつ・どの面を・どの工法で塗るかの日程表をお渡しすることです。ここが共有されていれば荷物の予定を先に組めます。工事の日程が読めないから困るというのが、事業用建物の塗装でいちばん多い不満です。塗装デザイン.comでは工程表を事前にお出しして、御社の予定に合わせて順番を調整します。