A. 基本的には同じ色でまとめることをおすすめします。倉庫と事務所が一つの棟でつながっている場合、境目で色を変えると「後から増築した建物」に見えてしまいます。3案とも外壁を同一色にしているのはそのためで、一体の建物として大きく見せたほうが、会社としての存在感も出ます。事務所部分を目立たせたいときは、色を変えるのではなく、エントランスの庇・扉まわりの見切りで締めるか、社名サインを置く位置で処理するほうが自然にまとまります。どうしても分けたい場合は、同系色の明度違いにとどめると失敗しません。
Q2
足元の腰壁だけ色を変えると、費用は上がりますか?
A. ほとんど上がりません。塗り分けの費用が跳ね上がるのは、平らな一枚の壁の途中で色を切り替えるときです。真っ直ぐな養生ラインを一周きれいに通す手間がかかるためです。一方で今回の建物は、足元にコンクリート腰壁という素材の切り替わりがすでに存在します。素材が変わる場所には必ず見切りがあるので、そこをそのまま塗り分けラインに使えます。しかも腰壁は金属サイディングとは下地が違うので、どのみち別の下塗り材を使います。大面積の建物で仕上がりを締める、いちばん費用対効果の高い方法です。
Q3
黄色やこげ茶のような色は、近隣や景観条例で問題になりませんか?
A. 多くの地域では問題ありませんが、2点だけ確認してください。ひとつは地域の景観計画・色彩基準で、自治体によっては大規模建築物の外壁に彩度や明度の基準を設けている地域があります。工業地域でも景観形成地区に指定されていることがあるため、着工前に必ず確認します。もうひとつは、大面積になると色は明るく強く見えるという点です。小さなカラーチップで選ぶと必ず「思ったより派手」になるため、A3以上の見本とシミュレーション画像の両方で確認するのが確実です。なお倉庫・工場は住宅地のように周囲と揃える必要がない分、住宅よりも色の選択肢が広い建物です。
Q4
シャッターも外壁と同じ色にできますか?
A. できます。B案がまさにその考え方で、シャッターを外壁と同色にすると大きな開口部の存在感が消え、建物が一つの塊として見えます。逆にA案・C案のように濃色で残すと、開口部が意図した黒い面として意匠になります。どちらが正解ということはなく、建物をどう見せたいかで決めます。ただしシャッターは金属サイディングと素材も塗膜も違うため、外壁と同じ塗料をそのまま塗ることはできません。錆止めから工程を分けて上塗りで色を合わせます。スラットは可動部なので厚塗りすると巻き上げ時に塗膜が擦れ、この部分は職人の経験が出るところです。
Q5
来客のある事務所ですが、営業しながら工事できますか?
A. できます。足場は建物の外周に組むため、シャッターの開閉と搬出入は原則そのまま続けられます。事務所への出入りも、足場に養生ネットをかけた状態で通常どおり可能です。調整が必要なのはエントランスの庇と扉まわりを塗る日で、塗料の乾燥時間を確保するため一時的に別の出入口へ動線を振り替えることがあります。来客のご予定が決まっている日があれば、工程表を作る段階でお知らせください。その日を避けて工程を組みます。シャッター自体を塗る日は、その面の開閉が半日〜1日制限されます。
塗装前写真から作る塗装デザイン
3つの仕上がりイメージ
デザイン案
design concept
事務所が同じ棟にある倉庫は、少し事情が違います。取引先も、面接に来る求職者も、配送のドライバーも、必ずこの外壁を見てからエントランスに入るからです。外壁は、名刺を渡す前に相手が見ている情報でもあります。今回は3案とも足元の腰壁で色を切り替えるツートンで構成しました。同じ切り替えラインでも、色の組み合わせで印象がここまで変わります。
3つの塗装デザイン案
塗装デザイン.comでは、塗装前の外観写真をもとに、デザイナーが3つの塗装デザイン案(仕上がりイメージ)を作成し、完成イメージを共有してから進めます。
A
B
C
※掲載のデザイン案はイメージです。実際の仕上がりは
日当たり・素材・画面表示などにより見え方が異なります。
BEFORE
今回の対象は、片流れ屋根の背の高い倉庫棟の右手に、2階建ての事務所部分が一体でつながった建物です。左手に大型シャッター1連と鉄骨の水平庇、正面には上下2段の横長連窓、右手にガラス扉と小庇のエントランスがあります。
外壁は縦張りの金属サイディングで、足元には建物を一周するコンクリートの腰壁(立ち上がり)があります。
現状は外壁全体がくすんだシルバーホワイトに退色し、手で触ると白い粉がつくチョーキング状態です。笠木の下から縦に、黒い雨だれの筋が壁の高さいっぱいに何本も流れ、庇の下とシャッター上部の壁面には黒ずみが帯状に溜まっています。足元のコンクリート腰壁には苔と黒ずみが付着し、外壁との境目がぼんやり汚れて見えています。
樋・水切り・シャッターのガイドレールからは錆が出はじめています。金属外壁は塗膜が切れた瞬間から錆が進むため、ちょうど塗り替えの適期です。
この建物でいちばん効いているのは、背の高い壁が雨だれの筋を縦に長く見せてしまっている点です。倉庫棟は2階建て住宅よりも軒高があり、笠木から地面まで遮るものがありません。汚れた水がそのまま一本の線として壁を流れ落ち、白い外壁がその線を最大限のコントラストで映し出しています。
ここから
白い外壁で最も目立つ、縦に長い雨だれの筋を色で抑える
足元の腰壁を、外壁と同色にするか別色で締めるかを決める
シャッター・庇・樋まで塗るか、外壁だけにするかを選ぶ
事務所部分も含めて、来客が見る建物としての印象を整える
塗装は、錆を止めて建物を守るだけでなく、会社の印象を整える手段でもあります。
AFTER
— デザイン A —
ブルーグレー×チャコール腰壁で
雨だれの筋を”色そのもの”で消してしまう
CONCEPT
外壁全体をブルーグレー(青みを含んだ中明度のグレー)で塗り、足元の腰壁・シャッター・庇・柱・サッシまわりをチャコールグレーで締めた寒色系のツートンです。
3案の中でもっとも業種を選ばない配色で、社内の合意がいちばん取りやすい案でもあります。
この案の狙いはシンプルで、ビフォアで最大の弱点だった雨だれの筋を、色の明度で見えなくすることです。雨だれは黒に近いグレーの汚れなので、外壁自体が中明度のグレーになれば、汚れとの明度差が一気に縮まります。白い壁では「新品か、汚れているか」の二択でしたが、グレーにはきれいに見える幅があります。同時にこの色は無難ではありません。青みを含んだグレーは、白やベージュのような経年でくすんだ色と決定的に違い、選んで置いた色に見えます。金属サイディングの縦リブにきれいな陰影が出るのもグレーの特徴で、平坦になりがちな大きな壁面に立体感が生まれます。事務所部分の連窓とサッシのグレーとも系統が揃うため、建物全体が一つの意匠としてまとまります。
この案が向く方
✔ 白い外壁の雨だれ汚れに、もう悩みたくない
✔ 業種や取引先を選ばない、きちんとした印象にしたい
✔ 社内で反対が出にくい配色を選びたい
✔ 事務所部分も含めて、清潔感のある建物にしたい
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁(倉庫・事務所部分とも)
ブルーグレーで統一し、黒い雨だれとの明度差を縮めて汚れが浮かない壁面にする
足元の腰壁(立ち上がり)
チャコールグレーで一周させ、泥はねが集中する足元を濃色で受けて建物の重心を下げる
シャッター・庇・柱・サッシまわり
付帯部も腰壁と同じチャコールに揃え、グレー2色だけで構成して線の色が散らからないようにする
おすすめの艶(ツヤ)
5分艶
グレーは艶を落としすぎると「退色した壁」に見え、せっかく塗り替えてもビフォアの印象に近づいてしまいます。ある程度光を返すことで塗り立ての清潔感が出ます。一方で艶を上げすぎると金属外壁は反射が強くなりすぎるため、5分艶がちょうどいい着地点です。
汚れの目立ちやすさ
中明度のグレーは、黒い汚れとも白い水アカとも明度差が中間になるため、どちらの汚れも極端には目立ちません。3案の中でもバランスよく汚れに強い配色です。
泥はねが集中する足元をチャコールにしているのも実用的な部分です。塗料はシリコン以上であれば十分に狙いを保てますが、低汚染(親水性)塗料を選ぶと雨が汚れを洗い流してくれるため、雨だれ対策としてはさらに効果的です。
— デザイン B —
ダークブラウン×アイボリー腰壁で
重心を下げて、街並みに溶け込ませる
CONCEPT
外壁・シャッター・庇・柱・樋のすべてをダークブラウン(こげ茶)で塗り込み、足元の腰壁だけをアイボリーで残した配色です。
A案とは真逆の考え方で、建物を目立たせずに、佇まいで信頼を出す方向にまとめています。
大型の倉庫は、それだけで周囲に圧迫感を与えます。特に近隣に住宅がある立地では、明るい色で大きな面を塗ると建物が実際より膨らんで見え、「大きい建物が建った」という印象が強く残ります。濃色は面を引き締めて見せるため、同じ建物でもひとまわり小さく、落ち着いて見えます。黒やチャコールではなく茶を選んでいるのは、茶が木・土・瓦といった自然素材の色だからです。周囲に緑や住宅がある環境でも冷たく浮きません。そして足元のアイボリー。濃色一色だと建物が地面に沈み込んで重く見えますが、腰壁に明るい帯を一本通すことで、建物が地面からすっと立ち上がって見えます。
この案が向く方
✔ 近隣に住宅があり、建物の圧迫感を抑えたい
✔ 落ち着いた・重厚な印象で信頼感を出したい
✔ 雨だれや黒ずみを、いちばん確実に目立たなくしたい
✔ 派手さではなく、佇まいで見せたい
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁(倉庫・事務所部分とも)
ダークブラウンで全体を塗り込み、大きな面を引き締めて建物をひとまわり小さく見せる
足元の腰壁(立ち上がり)
アイボリーの帯を一周させ、濃色の塊の下に明るい水平ラインを通して建物を地面から立ち上げる
シャッター・庇・柱・樋
付帯部まで外壁と同じダークブラウンで塗り込み、開口部の存在感を消して建物をひとつの塊として見せる
おすすめの艶(ツヤ)
艶消し〜3分艶
濃色は艶を上げるほど反射が強くなり、金属外壁では光が当たった部分だけが白く飛んで、かえって安っぽく見えます。艶を抑えるとこげ茶が木や土に近い落ち着いた質感になり、アイボリー腰壁のマットな表情とも自然につながります。この案は色より艶の設定で仕上がりが決まります。
汚れの目立ちやすさ
黒い汚れに関しては3案で最強の配色です。雨だれ・黒ずみ・排気の汚れはすべて濃色の壁に沈むため、ビフォアで最大の弱点だった縦の筋は完全に見えなくなります。
一方で弱点が一つあります。アイボリーの腰壁です。ここは泥はねが最も集中する場所なので、明るい色を置くと真っ先に汚れが出ます。腰壁には必ず低汚染(親水性)塗料を指定してください。濃色は表面温度も上がりやすいため、フッ素系または無機塗料を推奨します。屋根を遮熱仕様にすると、濃色化による庫内温度の上昇も抑えられます。
— デザイン C —
クリームイエロー×チャコールで
思い切った、いちばん見つけてもらえる倉庫
CONCEPT
3案の中でもっとも思い切った選択です。外壁全体をクリームイエロー(黄土色に寄せた、彩度を落とした明るい黄)で塗り、腰壁・シャッター・庇・鉄骨柱・サッシまわりをチャコールで締めました。
黄色を大面積に使う建物はほとんどありません。だからこそ、この建物は一度見たら忘れられません。
「国道沿いの黄色い倉庫です」の一言で場所が伝わる。搬入業者・配送ドライバー・初めての来客にとって、これは想像以上に実用的な価値があります。看板や案内サインを増やさなくても、建物そのものが目印になります。要点は彩度を落としたクリームイエローを選んでいることです。原色に近いビビッドな黄色は工事現場のような印象になりますが、黄土色に寄せた黄は土壁や漆喰に近い、日本の風景にもともとある色なので、強い色なのに違和感がありません。そして明るい色は大面積で膨張して見えます。それを抑えているのがチャコールで、腰壁・シャッター・庇・柱という線と面の縁をすべて濃色で締めることで、明るい壁面が黒い線で縁取られ、建物の輪郭がぼやけずにきちんと立ちます。
この案が向く方
✔ 場所を覚えてもらいたい・道案内をラクにしたい
✔ 周囲の白やグレーの倉庫の中で埋もれたくない
✔ コーポレートカラーを建物に反映させたい
✔ 明るく、社員が気持ちよく通える建物にしたい
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁(倉庫・事務所部分とも)
クリームイエローで大きな面を一色に統一し、通りから一目で場所が分かる建物にする
足元の腰壁(立ち上がり)
チャコールで一周させ、明るい壁面が浮かないよう建物の重心を下げて締める
シャッター・庇・鉄骨柱・サッシまわり
線と面の縁をすべてチャコールで縁取り、強い色を使っても輪郭がぼやけないようにする
おすすめの艶(ツヤ)
3分艶
彩度のある明るい色は艶を上げると光を強く跳ね返し、色が実際より膨張して見えます。大面積ではこれが「思ったより派手」に直結します。艶を抑えると黄色が一段落ち着いて土の色に近づき、縦張りサイディングのリブに素直な陰影が出て、面が引き締まって見えます。
汚れの目立ちやすさ
意外に思われますが、黄土色系は土埃・砂ぼこりと色が近く、汚れに強い色です。ビフォアで目立っていた黒い雨だれの筋も、白い壁ほどのコントラストにはなりません。泥はねが集中する足元をチャコールで受けているので、いちばん汚れる場所も守られています。
ただし彩度のある色には褪色(色あせ)という別の課題があります。黄・赤・緑系の顔料は紫外線に弱く、グレードの低い塗料だと数年で色が抜けて見えます。この案はフッ素系または無機塗料+高耐候顔料をおすすめします。
POINT
色選びのポイント
3案を選ぶ基準
A〜Cで迷うときは、「この建物に何を担わせたいか」という視点で考えると決めやすくなります。汚れとの付き合い方か、周囲との調和か、目印としての分かりやすさか。
デザインA
ブルーグレー×チャコール腰壁
清潔・きちんとしている
・雨だれ汚れがいちばん気にならない
デザインB
ダークブラウン×アイボリー腰壁
重厚・落ち着く
・近隣への圧迫感を抑えられる
デザインC
クリームイエロー×チャコール腰壁
明るい・目印になる
・場所を覚えてもらえる
また、色だけでなく艶(ツヤ)・塗料グレード・屋根の遮熱の有無・社名サインの扱いまでセットで決めると、仕上がりの満足度が上がりやすくなります。特にB案・C案のように色そのものが価値になる配色では、塗料のグレードが仕上がりの寿命を直接左右します。
失敗しにくいコツ
色を決める前に、「どこで色を切り替えるか」を先に決めることです。
今回の建物のように、足元のコンクリート腰壁という素材の切り替わりがすでにある建物は、そのラインをそのまま塗り分けラインに使えます。腰壁は下地が違うのでどのみち別の下塗り材を使うため、別の色にしても手間はほとんど変わりません。追加費用はほとんどかからず、それでいて仕上がりは格段に締まります。
Q&A
よくある質問
Q1
倉庫部分と事務所部分で、色を変えたほうがいいですか?
A. 基本的には同じ色でまとめることをおすすめします。倉庫と事務所が一つの棟でつながっている場合、境目で色を変えると「後から増築した建物」に見えてしまいます。3案とも外壁を同一色にしているのはそのためで、一体の建物として大きく見せたほうが、会社としての存在感も出ます。事務所部分を目立たせたいときは、色を変えるのではなく、エントランスの庇・扉まわりの見切りで締めるか、社名サインを置く位置で処理するほうが自然にまとまります。どうしても分けたい場合は、同系色の明度違いにとどめると失敗しません。
Q2
足元の腰壁だけ色を変えると、費用は上がりますか?
A. ほとんど上がりません。塗り分けの費用が跳ね上がるのは、平らな一枚の壁の途中で色を切り替えるときです。真っ直ぐな養生ラインを一周きれいに通す手間がかかるためです。一方で今回の建物は、足元にコンクリート腰壁という素材の切り替わりがすでに存在します。素材が変わる場所には必ず見切りがあるので、そこをそのまま塗り分けラインに使えます。しかも腰壁は金属サイディングとは下地が違うので、どのみち別の下塗り材を使います。大面積の建物で仕上がりを締める、いちばん費用対効果の高い方法です。
Q3
黄色やこげ茶のような色は、近隣や景観条例で問題になりませんか?
A. 多くの地域では問題ありませんが、2点だけ確認してください。ひとつは地域の景観計画・色彩基準で、自治体によっては大規模建築物の外壁に彩度や明度の基準を設けている地域があります。工業地域でも景観形成地区に指定されていることがあるため、着工前に必ず確認します。もうひとつは、大面積になると色は明るく強く見えるという点です。小さなカラーチップで選ぶと必ず「思ったより派手」になるため、A3以上の見本とシミュレーション画像の両方で確認するのが確実です。なお倉庫・工場は住宅地のように周囲と揃える必要がない分、住宅よりも色の選択肢が広い建物です。
Q4
シャッターも外壁と同じ色にできますか?
A. できます。B案がまさにその考え方で、シャッターを外壁と同色にすると大きな開口部の存在感が消え、建物が一つの塊として見えます。逆にA案・C案のように濃色で残すと、開口部が意図した黒い面として意匠になります。どちらが正解ということはなく、建物をどう見せたいかで決めます。ただしシャッターは金属サイディングと素材も塗膜も違うため、外壁と同じ塗料をそのまま塗ることはできません。錆止めから工程を分けて上塗りで色を合わせます。スラットは可動部なので厚塗りすると巻き上げ時に塗膜が擦れ、この部分は職人の経験が出るところです。
Q5
来客のある事務所ですが、営業しながら工事できますか?
A. できます。足場は建物の外周に組むため、シャッターの開閉と搬出入は原則そのまま続けられます。事務所への出入りも、足場に養生ネットをかけた状態で通常どおり可能です。調整が必要なのはエントランスの庇と扉まわりを塗る日で、塗料の乾燥時間を確保するため一時的に別の出入口へ動線を振り替えることがあります。来客のご予定が決まっている日があれば、工程表を作る段階でお知らせください。その日を避けて工程を組みます。シャッター自体を塗る日は、その面の開閉が半日〜1日制限されます。