A. ケレン(錆落とし)と錆止め下塗りです。これが工事の本体だと考えてください。金属外壁・折板屋根・シャッターは、いずれも薄い鋼板です。守っているのは表面のメッキと塗膜だけで、そこが切れた瞬間から錆が始まります。錆の上にそのまま塗料を乗せても、塗膜の下で錆が進み続け、数年で膨れて剥がれます。見た目はきれいになっても、内側では何も止まっていません。工程は、錆を工具で完全に削り落とし、錆止め専用の下塗りを入れてから、上塗りを2回という順になります。ALCやモルタルの建物がシーリングの打ち替えを先に必要とするのに対し、金属の建物はケレンと錆止めが同じ位置づけです。ここを省いた見積りは金額が安くなりますが、5年後にもう一度足場を組むことになります。
Q2
大型シャッターも一緒に塗ってもらえますか?
A. 塗れます。ただし、壁とは別の考え方が必要です。シャッターは巻き取って収納する可動部なので、スラット(板)同士が擦れ合います。壁と同じ塗料をそのまま厚く塗ると、巻き取りのたびに塗膜が擦れて剥がれ、開閉が重くなることもあります。適切な塗料を薄く均一に入れるのが基本です。またシャッターは、この建物でいちばん錆が進んでいる部位でもあります。とくに下端の座板とガイドレールは、雨水と泥が溜まりやすく錆が集中します。塗装前に開けた状態と閉めた状態の両方で錆を確認し、隠れている部分まで落としてから塗ります。塗装の日はそのシャッターの使用が半日〜1日制限されますが、2連あるので片方ずつ工程を分ければ、荷役を完全に止めずに進められます。
Q3
錆が出ている金属サイディングは、張り替えたほうが安く済みますか?
A. 穴が開いていなければ、塗装で十分です。判断基準は板厚が残っているかどうかです。金属サイディングの錆には大きく2段階あります。表面の点錆・浮き錆の段階なら、ケレンで削り落として錆止めを入れれば完全に止まります。今回の建物はこの段階です。一方、錆が板を貫通して穴が開いている、押すとベコベコと沈む、断面が層状に膨らんでいるという状態まで進むと、塗装では戻せません。この場合はその部分だけ板を交換し、周囲は塗装で仕上げるという組み合わせが現実的です。建物全体の張り替えは、費用が塗装の数倍になります。大事なのは判断を先延ばしにしないことです。点錆なら塗装で済むものが、あと数年で部分交換になり、さらに放置すると全面張り替えになります。金属の建物は、待つほど工事の種類そのものが変わっていきます。
Q4
工場の稼働を止めずに工事できますか?
A. できます。ただし庇まわりだけ、工程の調整が必要です。足場は建物の外周に組みますが、シャッター前は庇が深く張り出しているため、トラックの接車スペースを確保した組み方ができます。事務所への出入りも養生ネットをかけた状態で通常どおり可能です。調整が必要なのは2つで、ひとつはシャッターを塗る日。片方ずつ分ければ荷役は止まりません。もうひとつは庇の天井面(軒天)と鉄骨を塗る工程で、ここは下に車両がいると作業できないため、荷役の少ない時間帯や土日に集中させるのが確実です。なおケレン作業には音が出ます。工具で錆を削るため静かな作業ではありません。近隣に住宅がある場合や、精密作業のある工程がある場合は、その時間帯を先にお知らせいただければ作業計画のほうを合わせます。
Q5
ネイビーのような濃い色は、庫内が暑くなりませんか?
A. 外壁の色より、屋根の仕様のほうが影響は圧倒的に大きいです。庫内温度を上げているのは日射を真上から受ける屋根面で、壁面が受ける日射は角度が浅く時間帯も限られます。ですので、屋根を遮熱塗料で仕上げれば外壁を濃色にしても庫内温度は下がります。ただし金属の建物には、ALCやコンクリートにはない事情があります。鋼板は熱をそのまま室内側に伝えます。蓄熱しない代わりに、断熱層が薄い建物では日中の熱がダイレクトに入るため、屋根の遮熱がそのまま体感差になって出ます。外壁側にも遮熱タイプの塗料はありますので、外壁・屋根の両方を遮熱仕様でお見積りすることも可能です。色あせについては、濃紺は褪色すると青が抜けて灰色がかって見えるため、色が抜けたという印象が出やすい色です。A案を選ばれる場合はフッ素系または無機塗料+高耐候顔料が前提になります。グレードさえ確保すれば10〜15年は狙った色が保てます。
塗装前写真から作る塗装デザイン
3つの仕上がりイメージ
デザイン案
design concept
金属サイディングの工場・倉庫は、壁が傷む前に「錆」が先に出ます。錆は汚れと違って洗っても落ちず、放っておくと塗膜の下に潜り込んで広がります。そのうえで、縦張りの角波が並ぶ大きな壁面をどう見せるか。色で汚れを沈めるか、線で建物の輪郭を立てるか、色数を減らして整えるか。同じ建物でも考え方がここまで変わります。
3つの塗装デザイン案
塗装デザイン.comでは、塗装前の外観写真をもとに、デザイナーが3つの塗装デザイン案(仕上がりイメージ)を作成し、完成イメージを共有してから進めます。
A
B
C
※掲載のデザイン案はイメージです。実際の仕上がりは
日当たり・素材・画面表示などにより見え方が異なります。
BEFORE
今回の対象は、縦張りの角波金属サイディングで仕上げた、2階建ての工場・倉庫です。正面に大型シャッターが2連並び、その上にトラックが横付けできる深い庇(キャノピー)が張り出しています。右手にはアルミのガラス自動ドアのエントランスと小庇があり、2階には横長のハイサイド連窓、側面には縦長の窓が並びます。
足元にはコンクリートの腰(立ち上がり)が一周し、シャッターの前には黄色のガードポールが4本立っています。
外壁全体はくすんだ灰白色に退色し、触ると白い粉が付くチョーキングが出ています。角波のリブ(縦の凹凸)に沿って雨だれの黒い縦筋が入り、パラペットの笠木はパネルごとに明るさが揃わなくなっています。庇の鉄骨・折板屋根・竪樋には白化と点錆が出はじめ、足元の腰コンクリートには苔と黒ずみが付着しています。
この建物でいちばん急ぐのは、大型シャッターの錆です。スラットに赤茶色の錆が縦の筋になって垂れ、ガイドレールと下端の座板にも錆が帯状に出ています。壁の退色は見た目の問題ですが、錆は進行する劣化です。金属サイディングも折板屋根もシャッターも、素材そのものは薄い鋼板で、守っているのは表面のメッキと塗膜だけです。その塗膜が切れた場所から錆が始まり、一度始まると塗膜の下を這うように広がります。
そして金属の建物は、水を吸わない代わりに逃げ場もありません。ALCなら壁が水を吸って時間を稼ぎますが、鋼板は錆びた瞬間から板厚が減っていきます。今回のように壁はまだ健全で、シャッターと付帯部にだけ錆が出ている状態は、ケレン(錆落とし)と錆止めで完全に止められる、費用的にいちばん有利なタイミングです。
ここから
シャッターと付帯部の錆を削り落とし、錆止めで進行を止める
リブに沿って縦に出ている雨だれの筋を、色と塗料で抑える
庇・鉄骨・笠木・樋の色をどう扱うかを決める
大型シャッターを壁と揃えるか、色を変えて見せるかを選ぶ
塗装は、錆を止めて建物を守るだけでなく、会社の印象を整える手段でもあります。
AFTER
— デザイン A —
ネイビーブルー×ブラウンで
錆の記憶を消す、いちばん思い切った工場の顔
CONCEPT
外壁全体をネイビーブルー(深い紺)で塗り込み、庇の鉄骨・折板・パラペットの笠木・竪樋をダークブラウン(こげ茶)、大型シャッターも同じダークブラウンで揃え、足元の腰だけをベージュで明るく残した配色です。
3案の中でもっとも思い切った選択で、工場を「箱」から「拠点」に変える方向にまとめています。
金属サイディングの工場・倉庫は、そのほとんどが白かシルバーです。並んだ工業団地のなかで、濃紺の建物は一棟だけで場所の目印になります。しかも紺は、赤や黄のような強い色と違い、濃いのに落ち着いて見えるという珍しい性質を持っています。製造・物流・建設といった業種では、それがそのまま信頼感につながります。設計上の要点は、紺と組んだのが黒ではなくブラウンだという点です。濃紺に黒を合わせると全体が沈んで重くなりますが、ブラウンは紺よりわずかに明るく暖かいため、庇の鉄骨と樋が建物の骨格として素直に読めます。深く張り出したキャノピーの立体感が、影だけで潰れてしまうのを防いでいます。そしてこの案には、この建物ならではの効果があります。ビフォアで最も気になっていた、リブに沿った黒い雨だれの縦筋が濃紺のなかに完全に沈み、角波の凹凸は残したまま汚れの筋だけが消えます。
この案が向く方
✔ 塗り替えを機に、企業イメージごと刷新したい
✔ 工業団地の白い建物の中で埋もれたくない
✔ リブ沿いの黒い雨だれに、もう悩みたくない
✔ 建物を看板・ブランディングの一部として使いたい
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁(角波金属サイディング)
ネイビーブルーで全面を塗り込み、リブ沿いの黒い縦筋を濃色に沈めて、凹凸だけを残し汚れの跡を消す
庇(キャノピー)の鉄骨・折板・笠木
黒ではなくダークブラウンで組み、紺より少しだけ明るい暖色にして深い庇の立体感を影に潰させない
大型シャッター・足元の腰・竪樋
シャッターを庇と同じブラウンで揃えて面の分割を減らし、足元の腰だけベージュで残して建物を地面から持ち上げる
おすすめの艶(ツヤ)
艶消し〜3分艶
角波の金属サイディングは縦のリブが等間隔に並んでいるため、艶を上げるとリブの山ごとに光が線状に反射して、壁が縞模様に見えます。濃色ではこの反射がとくに強く出ます。艶を抑えると紺が深く沈み、リブの陰影が自然な凹凸として読めるようになります。この案は色より艶の設定で仕上がりが決まります。
汚れの目立ちやすさ
リブ沿いの黒い雨だれ、排気の黒ずみは、ほぼ完全に目立たなくなります。この建物の弱点に対しては、3案でもっとも効く配色です。
一方で濃色には2つの注意点があります。ひとつは白い水アカやチョーキングの粉が目立つこと。もうひとつは、錆汁(赤茶色)は濃紺の上でも目立つという点です。紺は黒い汚れを隠しますが、赤茶の筋は隠しません。つまりこの案こそ、ケレンと錆止めを手抜きできない配色だということです。塗料はフッ素系または無機を強くおすすめします。濃紺は褪色すると青が抜けて一気に灰色がかって見え、金属外壁は表面温度も上がりやすいためです。屋根を遮熱仕様にすると、濃色化による庫内温度の上昇も抑えられます。
— デザイン B —
ホワイト×ビビッドブルーで
ラインで見せる、清潔感のあるコーポレートカラー
CONCEPT
外壁をホワイトで明るく塗り直し、パラペットの笠木・庇の見切り・エントランスの小庇・シャッターの枠まわり・足元の腰にビビッドブルーを線として通した配色です。大型シャッターはシルバーグレーで軽くまとめています。
3案で唯一、色を「面」ではなく「線」で使っている案です。
工場・倉庫の外観は、どうしても大きな白い面が続きます。そこに青いラインを一本通すと、建物の輪郭がはっきりし、平べったく見えていた壁に奥行きが出ます。とくに効いているのが、深く張り出した庇の先端です。ここに青を入れると、庇が壁から突き出した屋根として立体的に読めるようになります。もうひとつの狙いは入口の分かりやすさです。工場・倉庫は初めて訪れた方がどこから入ればいいのか迷いやすい建物で、大型シャッターのほうが圧倒的に大きいため、事務所の入口を探してしまいます。この案ではエントランスの小庇に同じ青を入れて、色そのものを案内サインにしています。設計上の要点は、青を必ず建物の3箇所以上に置いていることです。笠木・庇・腰と高さを散らして同じ色を反復させることで、線が飾りではなくデザインになります。社章やロゴのコーポレートカラーをそのまま使えるのも、この案の実用的な部分です。
この案が向く方
✔ コーポレートカラーを建物にそのまま使いたい
✔ 事務所の入口が分かりにくいと言われることがある
✔ 食品・精密・医療系など、清潔感が信用に直結する業種
✔ 建物を明るく見せて、職場の印象を良くしたい
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁(角波金属サイディング)
ホワイトで面をリセットし、退色した灰白色ではない「塗り立ての白」に戻して清潔感を前に出す
笠木・庇の見切り・エントランス小庇
ビビッドブルーを上・中・下の3箇所に反復させ、庇の立体感を出しながら色そのものを入口の案内サインにする
足元の腰・大型シャッター
泥はねとタイヤの巻き上げが集中する足元の腰を濃い青で受け、シャッターはシルバーグレーにして白い壁と青い線の邪魔をしない
おすすめの艶(ツヤ)
5分艶
白は艶を落としすぎると、退色したビフォアの灰白色に近い「くすんだ壁」に戻って見えてしまいます。ある程度光を返すことで塗り立ての清潔感が出ます。アクセントのビビッドブルーも同じ5分艶で揃えてください。白とアクセントで艶が違うと、線が貼り付けたように浮きます。
汚れの目立ちやすさ
正直に言えば、3案の中で汚れがいちばん見えるのがこの案です。白い壁は黒い雨だれ・排気・タイヤ跡と最大のコントラストになります。
ただしこの建物には有利な条件が2つあります。ひとつは角波のリブが縦に通っていること。雨水が横に広がらず縦に流れ落ちるので、汚れが面に染み出しにくい形状です。もうひとつは足元の腰を濃い青にしていること。泥はねとタイヤの巻き上げが集中する場所を、いちばん汚れに強い濃色で受けています。塗料は低汚染(親水性)タイプを必ず指定してください。雨が汚れを流し落とすので、白い壁の最大の弱点が実用レベルまで抑えられます。グレードはシリコン以上、ビビッドブルーの部分だけはフッ素以上にすると、鮮やかな青の褪色を防げます。鮮やかな色は、白よりも先に色が抜けます。
— デザイン C —
グレージュ×チャコールグレーで
10年後も古びない、いちばん外さない配色
CONCEPT
外壁をグレージュ(グレーとベージュの中間の、暖かみのある淡色)で塗り、庇の鉄骨・折板・パラペットの笠木・竪樋・大型シャッターをすべてチャコールグレーで締めた配色です。足元の腰はミディアムグレー。
明色の面と濃色の骨格という、いちばんシンプルな二層構成にまとめています。
グレージュは、この10年で工場・事務所建築でもっとも増えた色です。理由は明確で、白ほど汚れず、ベージュほど古びず、グレーほど冷たくないからです。白は数年で汚れが目立ちはじめ、ベージュは流行によって古く見え、グレーは業種によっては無機質すぎる。グレージュはその3つの弱点を同時に外しています。設計上の要点は、付帯部をすべてチャコール1色に統一していることです。ビフォアの状態を見ると、庇の鉄骨、樋、笠木、シャッターがそれぞれ違う退色をしていて、建物が細かい線でバラバラに区切られて見えています。ここを一色にまとめると、線が散らかったノイズから建物の骨格に変わります。深く張り出した庇の水平ラインと、シャッター2連の四角が、同じ濃さで揃って読めるようになる。色を足すのではなく、色数を減らすことで整える案です。3案の中で最も長く飽きが来ず、最も業種を選ばない配色でもあります。
この案が向く方
✔ 10年後も古びて見えない色にしたい
✔ 業種やテナントが変わっても使える外観にしたい
✔ 汚れの目立ちにくさを最優先したい
✔ 落ち着いた色にしつつ、冷たい印象にはしたくない
配色設計メモ(デザインの意図)
外壁(角波金属サイディング)
グレージュで面をまとめ、工場まわりの土埃や砂ぼこりと色の系統を揃えて汚れを浮かせない
庇・鉄骨・笠木・竪樋
バラバラに退色していた付帯部をチャコール1色に統一し、散らかった線を建物の骨格として読ませる
大型シャッター・足元の腰
いちばん汚れる場所をすべて濃色にし、泥はね・タイヤ跡・雨水の集まる位置を汚れに強い色で受ける
おすすめの艶(ツヤ)
3分艶
グレージュのような中明度の淡色は、艶を上げると光の当たり方で白っぽくも黄色っぽくも見え、面ごとに色が違って見えます。角波のリブがある壁ではその差がさらに出ます。艶を抑えると色が安定し、リブの陰影も素直に出ます。付帯部のチャコールも同じ3分艶で揃えてください。
汚れの目立ちやすさ
3案でもっとも汚れが目立ちにくい配色です。グレージュは中明度の暖色寄りで、黒い雨だれとも白いチョーキングの粉とも明度差が中間になります。工場まわりの汚れはその多くが茶〜灰色系なので、色の系統も揃っています。
そしていちばん汚れる場所が、すべて濃色になっています。泥はねが集中する足元の腰、タイヤの巻き上げを受けるシャッター、雨水が集まる庇と樋。ここをチャコールで受けているため、同じ年数が経ったときにまだきれいに見えるのがこの案です。塗料はシリコン以上で十分に成立します。予算をグレードではなく下地処理(ケレン・錆止め)に厚く配分できるのも、汚れに強い配色を選ぶ実質的なメリットです。
POINT
色選びのポイント
3案を選ぶ基準
A〜Cで迷うときは、「この建物を、誰に向けて整えるのか」という視点で考えると決めやすくなります。取引先の目か、来訪者の目か、そこで働く人の目か。
デザインA
ネイビーブルー×ブラウン
個性的・信頼感がある
・リブ沿いの黒い筋が完全に消える
デザインB
ホワイト×ビビッドブルー
明るい・清潔感がある
・入口の位置が色で伝わる
デザインC
グレージュ×チャコールグレー
穏やか・飽きが来ない
・3案で最も汚れが目立たない
また、色だけでなく艶(ツヤ)・塗料グレード・屋根の遮熱の有無・社名サインの扱いまでセットで決めると、仕上がりの満足度が上がりやすくなります。特にA案・B案のように色そのものが価値になる配色では、塗料のグレードが仕上がりの寿命を直接左右します。
失敗しにくいコツ
金属サイディングの外壁では、色を決める前に「錆」を見ることです。
今回の建物のように、壁は健全でシャッターと付帯部にだけ錆が出ている状態は、ケレンと錆止めで完全に止められる最後のタイミングです。ここを越えると、塗装では戻せない部分が出てきます。足場を架けるのは一度、そのときにどこまで直すかで次の10年が決まります。
Q&A
よくある質問
Q1
金属サイディングの工場で、塗装より先に必要な工事はありますか?
A. ケレン(錆落とし)と錆止め下塗りです。これが工事の本体だと考えてください。金属外壁・折板屋根・シャッターは、いずれも薄い鋼板です。守っているのは表面のメッキと塗膜だけで、そこが切れた瞬間から錆が始まります。錆の上にそのまま塗料を乗せても、塗膜の下で錆が進み続け、数年で膨れて剥がれます。見た目はきれいになっても、内側では何も止まっていません。工程は、錆を工具で完全に削り落とし、錆止め専用の下塗りを入れてから、上塗りを2回という順になります。ALCやモルタルの建物がシーリングの打ち替えを先に必要とするのに対し、金属の建物はケレンと錆止めが同じ位置づけです。ここを省いた見積りは金額が安くなりますが、5年後にもう一度足場を組むことになります。
Q2
大型シャッターも一緒に塗ってもらえますか?
A. 塗れます。ただし、壁とは別の考え方が必要です。シャッターは巻き取って収納する可動部なので、スラット(板)同士が擦れ合います。壁と同じ塗料をそのまま厚く塗ると、巻き取りのたびに塗膜が擦れて剥がれ、開閉が重くなることもあります。適切な塗料を薄く均一に入れるのが基本です。またシャッターは、この建物でいちばん錆が進んでいる部位でもあります。とくに下端の座板とガイドレールは、雨水と泥が溜まりやすく錆が集中します。塗装前に開けた状態と閉めた状態の両方で錆を確認し、隠れている部分まで落としてから塗ります。塗装の日はそのシャッターの使用が半日〜1日制限されますが、2連あるので片方ずつ工程を分ければ、荷役を完全に止めずに進められます。
Q3
錆が出ている金属サイディングは、張り替えたほうが安く済みますか?
A. 穴が開いていなければ、塗装で十分です。判断基準は板厚が残っているかどうかです。金属サイディングの錆には大きく2段階あります。表面の点錆・浮き錆の段階なら、ケレンで削り落として錆止めを入れれば完全に止まります。今回の建物はこの段階です。一方、錆が板を貫通して穴が開いている、押すとベコベコと沈む、断面が層状に膨らんでいるという状態まで進むと、塗装では戻せません。この場合はその部分だけ板を交換し、周囲は塗装で仕上げるという組み合わせが現実的です。建物全体の張り替えは、費用が塗装の数倍になります。大事なのは判断を先延ばしにしないことです。点錆なら塗装で済むものが、あと数年で部分交換になり、さらに放置すると全面張り替えになります。金属の建物は、待つほど工事の種類そのものが変わっていきます。
Q4
工場の稼働を止めずに工事できますか?
A. できます。ただし庇まわりだけ、工程の調整が必要です。足場は建物の外周に組みますが、シャッター前は庇が深く張り出しているため、トラックの接車スペースを確保した組み方ができます。事務所への出入りも養生ネットをかけた状態で通常どおり可能です。調整が必要なのは2つで、ひとつはシャッターを塗る日。片方ずつ分ければ荷役は止まりません。もうひとつは庇の天井面(軒天)と鉄骨を塗る工程で、ここは下に車両がいると作業できないため、荷役の少ない時間帯や土日に集中させるのが確実です。なおケレン作業には音が出ます。工具で錆を削るため静かな作業ではありません。近隣に住宅がある場合や、精密作業のある工程がある場合は、その時間帯を先にお知らせいただければ作業計画のほうを合わせます。
Q5
ネイビーのような濃い色は、庫内が暑くなりませんか?
A. 外壁の色より、屋根の仕様のほうが影響は圧倒的に大きいです。庫内温度を上げているのは日射を真上から受ける屋根面で、壁面が受ける日射は角度が浅く時間帯も限られます。ですので、屋根を遮熱塗料で仕上げれば外壁を濃色にしても庫内温度は下がります。ただし金属の建物には、ALCやコンクリートにはない事情があります。鋼板は熱をそのまま室内側に伝えます。蓄熱しない代わりに、断熱層が薄い建物では日中の熱がダイレクトに入るため、屋根の遮熱がそのまま体感差になって出ます。外壁側にも遮熱タイプの塗料はありますので、外壁・屋根の両方を遮熱仕様でお見積りすることも可能です。色あせについては、濃紺は褪色すると青が抜けて灰色がかって見えるため、色が抜けたという印象が出やすい色です。A案を選ばれる場合はフッ素系または無機塗料+高耐候顔料が前提になります。グレードさえ確保すれば10〜15年は狙った色が保てます。